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2025年06月15日

色彩を愉しめる人間と動物たち~色彩を楽しめない動物もいる~

色が見えるって、当たり前じゃない?

「ママ、このお花、ピンクと黄色がまざってる!」
子どもとお散歩をしていると、こんな声が聞こえてきます。私たち人間にとって、色はとても身近な存在。洋服の色、食べ物の色、空の色。そのすべてに私たちは反応し、時に気持ちまで左右されることもあります。
 でも実は「色を見分ける力」は、すべての生き物に備わっているわけではないのです。人間は、赤・青・緑の3色を識別する「三色型色覚(さんしょくがたしきかく)」を持っていて、およそ100万色以上の色を見分けることができるといわれています。
 さらに、色は私たちの気持ちとも深く関わっています。たとえば、赤は元気をくれたり、青は落ち着きをくれたり。色は、視覚だけでなく心にも働きかけてくれる存在なのです。

色彩を楽しめない動物たちの世界

 身近な存在である犬や猫は、人間とはちょっと違った色の世界を見ています。
たとえば犬は、「二色型色覚(にしょくがたしきかく)」で、青と黄色は見分けられますが、赤や緑は見分けづらいとされています。
 ワンちゃんと遊んでいる時に赤いボールを芝生に投げたのに見失ってしまうことがあるのは、このためです。
 またコウモリやフクロウなどの夜行性の動物たちは、暗闇の中で動くものを察知する能力に優れています。その代わり、色を識別する力はあまり発達していません。彼らにとって必要なのは、「色」よりも「光の明暗」や「動き」なのです。
 この動物たちにとって色彩豊かな昼の時間帯はどう見えているのでしょうか?
たとえばコウモリは、視力そのものがあまりよくなく、超音波(エコーロケーション)で周囲を感知しています。日中はまぶしすぎて目がうまく働かず、ほとんど活動しません。
 一方フクロウは、明るさの変化には敏感ですが、昼間の強い光はまぶしすぎて、コントラストの強いぼんやりした世界に見えていると考えられています。色の識別も苦手なので、彼らにとって昼の世界は、どちらかといえば“まぶしくて見えにくい時間”なのかもしれません。
 モグラのように地中で暮らす動物の中には、そもそも目が退化しているものもいます。そんな動物にとっては、色は“必要のない情報”なのかもしれませんね。

色彩を楽しめる動物たちの世界

 一方で、人間以上に豊かな色の世界を持っている動物も存在します。鳥類の多くは「四色型色覚(ししょくがたしきかく)」を持ち、人間には見えない紫外線まで感じることができるといわれています。もしかしたらクジャクの羽の輝きは、私たちには見えない“秘密の色”が隠れているのかもしれません。
 ミツバチやチョウといった昆虫も、紫外線を感知する目を持っています。花には人間には見えない“紫外線の模様”が描かれていることがあり、ミツバチたちはそれを目印に蜜の場所を見つけているのです。
 自然界では、私たちの想像を超える“色のやりとり”が行われているのですね。

親子で楽しむ「動物の目」体験

そんな「見え方のちがい」を、子どもと一緒に楽しむ方法があります。たとえば、赤と緑のセロファンを使って「犬のめがね」を手作りしてみましょう。それを通して絵本を見てみると、「あれ?赤がよく見えない!」という体験ができます。
 また、「今日はハチになってお散歩しよう!」と言って、公園の花を観察するのもおすすめです。ミツバチの目には、人間には見えない“紫外線の模様”が花びらに映っていて、その模様を目印に蜜の場所を見つけています。たとえば、私たちが「ただの白い花」と思っている花も、ハチには「ここに蜜があるよ!」というサインが見えていることがあるのです。そんな話をしながら、「どの花に行きたくなる?」と子どもと一緒に考えてみると、いつものお散歩がちょっとした冒険に変わりますよ。
 また、画用紙に「モグラの世界」として白黒の風景を描いたり、「クジャクの世界」としてカラフルな羽根に紫色をプラスして描いてみるのもおすすめです。
「この動物の目には、こんなふうに見えてるのかな?」と、子どもと一緒に想像しながら話してみると、まるで動物の目になって世界をのぞいているような気持ちになりますよ。

「ちがう見え方」を知ることが、心を育てる

「動物によって見える世界がちがうんだよ」という話は、子どもにとって「自分とはちがう存在がいる」ということに気づく、やさしい第一歩にもなります。
自分とちがう考え方や感じ方を知ること。それは、思いやりや共感といった“心の土台”を育てる力になります。色の見え方を通して、子どもと一緒に自然や生き物の世界を楽しんでみませんか?
 今日の空やお花の色も、きっといつもより少し特別に見えるはずです。

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