子育てやお花、花育、お花の効果などに
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「空色」と「水色」の違い、考えたことはありますか?どちらも“淡い青”という印象でぱっと見た感じでは大きな差がないようにも感じます。でも、子どもたちに聞いてみると、その感じ方は私たち大人が思っている以上に繊細で、違いがしっかりとあることに気づかされます。
例えば、ある6歳の子どもは「空色は晴れた日の空の色。水色はプールの水の色」と言いました。空の色と水の色、どちらも日常生活でよく見かけるものだからこそ、その違いを感じ取っているのでしょう。さらに別の8歳の子は、「空色は白っぽくて明るい、水色は青が少し強い」と答えました。色の明るさや濃さを意識しながら、しっかりと自分の言葉で色を区別しています。
これらの答えからわかるのは、子どもたちは色そのものを単なる視覚的なものとして捉えるのではなく、その色が持つ「意味」や「記憶」と結びつけて感じ取っているということです。
子どもたちの色に対する感覚は、大人が見落としがちな側面を教えてくれます。たとえば、空色を「晴れた日の空の色」と感じるのは、青空が広がる晴れた日に感じる、あの清々しい空気感や温かさを色に重ねているからでしょう。一方、水色を「プールの水の色」として捉えるのは、夏の暑い日にプールで遊んだ楽しい記憶が色と結びついているからかもしれません。
色は単なる視覚的な印象だけではなく、経験や感情と深く結びついています。子どもたちが色を通して感じる世界は、私たち大人にとっても新鮮で、どこか懐かしく、思わず立ち止まって見つめたくなるようなものです。
大人である私たちは、色をより抽象的に、または理論的に捉えがちです。しかし、子どもたちはそれぞれの色に思い出や感情を結びつけており、その発想は私たちに新たな視点をもたらし柔軟な考え方を教えてくれます。
日本語には、「赤」や「青」といったおおまかな色だけでなく、季節のうつろいや自然の情景を映しとった、繊細で豊かな色の名前が数多くあります。青に関連する色の名前も「空色」「水色」「露草色」「藍色」など、他にもたくさんあります。昔の人は色に対する感覚を細やかに育んでいた事が伺えますね。空色と水色を言い分けていたのも、、それぞれを具体的なイメージや記憶と繋げていたからでしょう。
実際に子どもたちに「空色と水色ってどう違う?」と聞いてみると、色に込められた自分だけのイメージを言葉にし、自然とその色が持っている意味や価値を再確認させられます。色の名前ひとつをとっても、それをどう感じるか、どう使うかは人それぞれ。その違いを感じることで、色彩の奥深さも感じられますね。
色に対する感覚は、生まれつきのものだけでなく、日々の経験や関わりの中で育っていくものです。子どもたちが「これは空色かな?」「ちょっと水色っぽいね」と言葉を使って色を表そうとする姿には、自分なりの世界を丁寧に観察しようとする意志が感じられます。そしてそれを誰かに伝えようとすることで、ことばの感覚も、心の動きも、少しずつ深まっていくのです。
だからこそ、大人は「正解を教えること」ではなく、「一緒に感じること」が大切なのかもしれません。子ども達が空を見上げて「今日の空は水色よりちょっと白い」と気づいたら、「ほんとだね、昨日よりやさしい色かもね」と応えてあげる。そんなささいなやりとりの中に、感性を育てる種がたくさん隠れています。
色の名前を覚えることが目的ではなく、色を通して世界をどれだけ豊かに感じられるか。その積み重ねが、子どもたちの想像力や言葉の力、そして誰かと気持ちを共有する力につながります。
同じ「青」でも、見る人の視点や経験によって、その色の意味や感じ方はまったく異なります。子どもたちが色を通して見ている世界には、大人の私たちが忘れてしまった繊細さや新鮮な驚きが詰まっていることに、はっとさせられることがあります。色の違いのように「感じ取る力」を育むことは、子どもたちの感性を豊かにすると同時に、私たち大人にも新たな視点をもたらしてくれるでしょう。
子どもたちの言葉に耳を傾け、今この瞬間に何を見て、どう感じているのかを共に味わうことで、日常の中にひそむ美しい瞬間を再発見していけるはずです。