子育てやお花、花育、お花の効果などに
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お正月といえば、百人一首を楽しむご家庭もあるのではないでしょうか?昔ながらの「かるた遊び」は、大人も子どもも一緒に楽しめる伝統的な遊びのひとつです。その百人一首に様々な植物が描かれていること、ご存知ですか?
もともと日本の和歌では、自然や植物がよく詠まれてきました。昔の日本人が四季の移ろいや自然と深く共生し、その美しさや儚さを生活の中で大切にしてきたことが伺えますね。そして、百人一首の歌の中にも、梅や桜、藤や萩など季節を感じさせる植物が登場します。家族が揃うお正月のひととき、歌の中に描かれた植物や自然について話せば、昔の日本の風習を知るきっかけになりますね。きっと、親子の会話も広がりますよ。
春の植物として詠まれた代表的なものが「梅」と「桜」です。 梅は、寒い冬の終わりにいち早く咲き始め、春の訪れを告げる植物として親しまれてきました。その甘い香りと可憐な花姿は、昔から多くの人々の心を和ませ、希望を感じさせる存在です。特に、雪の中に咲く梅の姿は、厳しい季節の中にも生命力を感じさせ、和歌の中では「忍耐」や「約束」の象徴として詠まれることもあります。
一方、桜は日本を象徴する花として、春の景色には欠かせない存在です。咲き誇る姿は目を見張る美しさですが、その命は短く、散りゆく儚さが古くから人々の心を動かしてきました。そのため、和歌では「歓び」や「別れ」、そして「一瞬の輝き」を表現する花として多く登場します。桜吹雪の情景は、春の華やかさと物悲しさが交錯する日本独自の感性を映し出していますね。
また、「藤」も春を彩る植物として知られ、それぞれが独特の情緒を持っています。藤の長く垂れる花房は、優雅さや慎ましさの象徴として詠まれ、その清楚な美しさが古代から愛されてきました。一方、萩は繊細な花をつける草花で、その控えめな姿が「物思い」や「移ろい」を表現するとともに、心の奥深い感情を映し出す存在として和歌に詠み込まれています。
これらの植物は、単なる風景の一部ではなく、四季折々の自然やそこに暮らす人々の感情と結びつき、和歌を通じて人々の心に深く刻まれてきました。その一つひとつに目を向けることで、日本の美しい自然観や豊かな感性を再発見することができます。
お正月に親しまれていた行事が詠み込まれた歌として、光孝天皇が詠んだ「君がため 春の野に出て 若菜つむ 我が衣手に 雪はふりつつ」という歌があります。この歌には「若菜摘み」という春を迎える準備として、若い草を摘む風習が登場しています。若菜摘みは、日本の古くからある風習で、年の初めに早春の野草を摘んで食べることで生命力をいただき、長寿を願っていました。お正月に七草を摘む習慣は、現代でも「七草がゆ」として残っていますよね。
またこの歌の意味は、まだ寒さ厳しい春先の雪が降り積もる中、袖をぬらしながらも若菜を摘むという献身的な姿が描かれています。この情景は、親が子どもを思う気持ちや、新しい年に誰かのために何かをする優しい心に通じるものがあります。
親子でこの歌を読みながら「若菜って、どんな草なんだろう?」「七草がゆってどんな植物が入っているのかな?」と話してみるのも面白いですよ。実際にお散歩で七草を探してみたり、春の草花に思いを馳せたりすることで、百人一首の歌がぐっと身近に感じられるはずです。
お正月の遊びに羽根つきや凧揚げもいいですが、今年は百人一首を通じて、日本文化や自然の美しさを再発見してみてはいかがでしょうか?百人一首の魅力は、単なる遊びとして楽しむだけでなく、歌に込められた自然の情景や感情を味わうことで、日本の四季や文化を深く感じ取れる点にあります。
例えば、家族で百人一首を囲みながら、それぞれの歌に登場する植物や情景について話し合ってみるのもいいですね。小さい子どもには難しい言葉もあるかもしれませんが、「この歌は春のお花がたくさん出てくるね」など、簡単な話題にするとわかりやすくなります。また、植物や動物が描かれた絵本や図鑑を一緒に見ながら歌の情景を想像するのもおすすめです。遊び感覚で親しむことで、自然や昔の人々の生活にも興味を持つきっかけになりますよ。
植物たちが織りなす情景の奥深さを感じながら、家族の温かなひとときを楽しんでください。